膨らむはずのないベストが、ここにある。
US NAVY ライフプリザーバーは、米海軍の艦上要員や航空要員が着用したCO2膨張式の救命胴衣だ。今回の個体はボンベ(炭酸ガスカートリッジ)が抜かれた状態での入荷で、ベスト本体のみになる。海に出る軍隊にとって、この手のベストは弾薬や無線機と同じくらい当たり前の装備だった。
なぜボンベを抜いて売るのか
火薬類に準じる圧縮ガスカートリッジは、そのままでは輸送も保管もできない。だから放出品として流れる救命胴衣は、たいていベストだけの姿になる。抜かれているからこそ、生地やハーネスの縫製をじっくり眺められるとも言えるだろう。
メエ・ウェストという愛称
CO2膨張式の救命ベストという発想自体は1940年代、第二次大戦の航空隊まで遡り、当時のパイロットたちは着膨らんだ姿を評して『メエ・ウェスト』と呼んだ——往年の女優の名を借りたジョークだ。この個体はその系譜の延長線上にある実用装備で、米海軍の艦上勤務の緊張感を今に伝える一着になる。
使われなかった証拠品
ボンベが無いということは、少なくとも実戦で膨らませた形跡がないという証明でもある。海に落ちれば命を預ける道具が、一度も試されずに倉庫で眠っていた——それだけで十分に面白い、実物ならではの一着だ!








