結び目ひとつにも、規則がある。
米軍の礼装・儀礼服に合わせて着用されたネクタイである。実物として実際に使われた一本で、戦闘服とは対照的な、規律と品位を示す装いの側の装備だ。
クラスAという世界
米陸軍のクラスA(礼装)は1950年代の制度改編以来受け継がれてきた装いで、ネクタイの色・幅・結び方まで規定で定められている。個人の好みが入り込む余地はほとんどない。階級や所属を問わず、全員が同じ姿を作る——それが軍の礼装というものである。
地味な仕立ての理由
民間のネクタイに比べて装飾は抑えられ、芯地は厚く丈夫だ。生地の裏側には官給品を示す「US」の表記が入り、部隊や個人の私物ではないことを物語る。美しさより耐久性、それが軍用品の一貫した思想だ。
戦闘服の対極にあるもの
迷彩でもコットンダックでもない、艶のある一本の布。装備品としては地味だが、軍という組織が礼儀と規律にどれだけの労力を割いてきたかを、静かに物語っている。




