中身は空、でも骨格はまだ現役
MOLLE IIファーストエイドポーチは、米陸軍が2001年前後に本格導入したMOLLE(モジュラー・ライトウェイト・ロードキャリング・イクイップメント)規格の応急手当用ポーチだ。サイズは約17cm×16cm×5cm、PALSウェビングでベストや弾帯にそのまま吊るせる大きさである。中身のIFAK(個人用応急キット)は抜かれているが、この個体はケースそのものが本体、当時の縫製と生地の張りを見るための一点だ。
ALICEからMOLLEへ
1973年から使われ続けたALICE(オールパーパス・ライトウェイト・インディビジュアル・キャリング・イクイップメント)に代わって導入されたのがMOLLEだ。最大の違いはPALSウェビング——1インチ幅のナイロンテープを1.5インチ間隔で縫い付けた格子状の装着列で、これに専用ポーチを編み込むことで、隊員ごとに配置を自由に組み替えられるようになった。応急手当ポーチの位置一つとっても、右利きか左利きか、車両乗員か徒歩部隊かで変わる。そういう「個人最適化」を初めて量産装備に持ち込んだのがこの世代である。
傷が語るもの
この個体には使用感による傷がある。ナイロン特有の擦れ、縁のほつれ——中身が抜かれている以上、どこかの隊員の手元を実際に離れた品ということだ。真新しいデッドストックより「使われた形跡」に価値を見る収集家は、実は少なくない。
ベストの一部として
PALS対応ポーチはサバイバルゲームや実用装備の世界で今も現役の規格で、フックアンドループでなく編み込み式という古典的な装着方法にこだわる愛好家は多い。空のケース一つでも、当時の縫製ピッチや生地厚を確かめる資料としては十分に語る。








