『フリッツ』と呼ばれた形には、理由がある。
US PASGTヘルメットは1983年に米陸軍で制式化され、それまでのM1スチールヘルメットに代わって20年近く前線を支えた装備だ。Personal Armor System Ground Troopsの頭文字を取ったこの名称は、頭部だけでなく防弾ベストまで含む一連の装備体系を指している。今回はMサイズの中古良品、ヘルメットカバー・チンストラップ・キャッツアイ付きで、頭囲は約63cm。
なぜ『フリッツ』なのか
丸みを帯びたシルエットが、ドイツ軍の鉄帽シュタールヘルムを連想させたことから、米兵たちは自嘲気味にこの愛称で呼んだ。皮肉交じりの呼び名だ。アラミド繊維(ケブラー)を一体成形した殻は、M1のような鋼板とライナーの二重構造ではなく、継ぎ目のない単一シェルという点で世代の違いを見せつける。
夜間行軍のキャッツアイ
カバー後部に縫い付けられた小さな蓄光タブが『キャッツアイ』——暗闇で前を歩く兵士との距離を保つための、ごく実用的な発光装置だ。パラシュート降下や夜間行軍で先頭を見失わないための工夫であり、派手さはないが命に関わる装備の一つ。
スクリーンに残った記録
記録は映像にも残る。1993年のモガディシュの戦いを描いた映画『ブラックホーク・ダウン』でPASGTは全編に登場し、湾岸戦争を扱った『ジャーヘッド』でも同型が確認できる。2000年代にMICHヘルメットへ道を譲るまで、米軍の顔と言える防具だった。









