止められなかった出血を、止めるためだけの一本。
C-A-T(コンバット・アプリケーション・ターニケット)は、四肢からの出血を止めることだけに特化した止血帯である。2000年代、米国のNorth American Rescue社を通じて米軍へ供給されるようになり、個人携行救急キット——IFAKの標準装備に組み込まれた。この一本は封を切られないまま残っていた未使用品だ。
片手で締まる構造
特徴はウィンドラス(巻棒)方式にある。マジックテープで仮止めしたあと、プラスチックの棒を回して締め上げる——これだけの手順に、負傷した片腕でも自分で扱えるという現場の要求が詰まっている。結び方を覚える必要がない道具は、パニックの中でこそ強い。
教義が兵士全員へ広がった理由
イラク・アフガニスタンでの戦訓から、四肢の出血は本来防げる死因だと分かってきた。以降、米軍は戦傷医療の教義(TCCC)を見直し、ターニケットの携行と使用は衛生兵だけの仕事ではなくなった。全兵士が訓練で叩き込まれるようになった、その転換を象徴する一本がC-A-Tだ。
棚に残った意味
使われなかった止血帯が残っているのは、むしろ喜ばしいことだと思う。誰かの腕を締めずに済んだ、という記録でもあるからだ。






