ヘリから宙づりのまま撤収する。特殊部隊の緊急離脱を支えるハーネス
一見すると複雑に交差したウエビングの束だが、この編み方には明確な理由がある。SPIE(Special Patrol Insertion/Extraction、スパイ・リギング)と呼ばれる手法で使うハーネスで、着陸できない状況のヘリコプターから隊員を吊り下げて進入・脱出させるための装具だ。
着陸できない場所からの脱出術
ジャングルや山岳、市街地の屋上など、ヘリが機体を下ろせない環境は珍しくない。SPIEはそうした場所でホバリングするヘリから太いロープを垂らし、複数の隊員がこのハーネスを介して一列に連結された状態でぶら下がり、そのまま移動・撤収する手法。ベトナム戦争期の特殊部隊運用で発展した技術とされ、現在も一部の特殊作戦部隊の訓練・任務で用いられている。
体に食い込む構造の意味
肩から腰にかけて複数のループとD字状の輪が組まれているのは、宙づりの状態でも体重を分散させ、姿勢を保つための設計。腰まわりにはウッドランド柄の芯地が入ったパッドがあり、長時間の懸垂状態でも局所への圧迫を和らげる工夫が見て取れる。派手な金具は使わず、ナイロンウエビングの縫製強度だけで人命を支える潔い作りだ。
訳ありという表示について
接合部の一部にウエビングのほつれや擦れが確認でき、実戦・訓練での使用歴を感じさせる状態。人命に関わる用途ゆえ実用への転用は推奨されないが、特殊部隊装備の実物資料としての価値は高く、SPIEという運用そのものを物語る一点になっている。







