顔の中心に一つだけ据えられた円筒フィルター、その形が世代を語る。
黒いゴムの表情に、正面中央の丸い濾過器がひときわ目を引く。米軍が長く運用したM17シリーズの改良型、M17A1ガスマスクだ。専用のキャリングバッグには「MASK, CHEMICAL-BIOLOGICAL, FIELD M17A1」のステンシル文字がはっきりと残り、今回の個体は未使用のデッドストック品になる。
1966年、前面フィルターへの転換
それ以前のM9・M9A1系マスクは左右どちらかに濾過缶を取り付ける非対称の形状だったのに対し、M17系は顔の正面中央にフィルターを配置する構造へと変わった。左右のバランスが取れることで視界や重心が安定し、長時間の着用でも疲労を抑えやすくなった、当時としては大きな設計変更だった。
給水チューブという生活の知恵
マスクの下部には金属製のチューブが取り付けられており、キャンティーン(水筒)と接続することでマスクを外さずに水分補給ができる仕組みになっている。化学・生物兵器の脅威下でも長時間の任務継続を可能にする、実戦運用を見据えた工夫の一つだ。
未使用のまま残った付属品
セットには予備のアウトサートレンズ(眼鏡装着者向けの外付けレンズ)や交換用パーツが未開封のビニール袋のまま同梱されている。冷戦期からベトナム戦争期にかけて広く配備された装備が、実際に使われることなく倉庫でその役目を待ち続けていた——そんな時間の止まり方を感じさせる一式だ。







